私は手間のかかることや、
不便なものに愛おしさを
感じることがあります。
最短距離で結果を出すことに
あまり価値をおいていないのかもしれません。
他者との競争も得意でもありません。
私が好きなバックカントリー。
誰も滑っていない新雪を滑り降りる
ために
重い荷物を背負って、
何時間もかけて雪山を登ります。
深々と降り積もった雪は、
音を吸収し無音の世界を作り出します。
時には、腰までの深さの雪を
ラッセルし登っても、
滑り降りるのは本当に一瞬。
とても効率のよいものではありませんが、
あの一瞬のターンにこそ
私の求めるものがあります。
例えるなら瞑想に近く、
無になるのではなく、
無が向こうからやってくる感覚。
それは、時間をかけたからこそ
感じられるものです。
サーフィンでも似た感覚があります。
ただ、ひたすら波待ちをするあの時間。
数時間待っても乗れる波が
来ないこともあります。
それでも、海に浮かんでいることは
気持ちがよく、心を開放し、
自然と自分がひとつになったような
感覚が得られるのです。
波がよくても、混み合っている
ポイントは好きではありません。
人と波を取り合うことは、
とてもストレスがかかることなのです。
新雪や波がくれる喜びはもちろんですが、
そこにたどり着くまでの時間や瞑想に
近い感覚を
私は大切にしています。
仕事をする上でも、
こうした感覚を大切にしたいと考えています。
良いデザインにたどりつくまでの
時間と考察。
もしかしたら面倒な話かもしれません。
でも、無理に苦手な舞台に立つより
「好きこそ物の上手なれ」。
私は自分の信じるステージでこそ、
良いデザインを生み出せると感じています。
スーパーミー『超オレ』という屋号は、
若かりし頃につけたもの。
競争の激しい業界で自分を
奮い立たせるためのネーミングでした。
でも、今ではそういった意味では無い
『超オレ』=『自分らしさ』に
辿り着いたような気がしています。